美容師がファン客をつかむためのポイント

美容師に求められるものが時代とともに変化してきています。

美容室にいらっしゃるお客様のなかで、美容師と話しても楽しくない、なるべくしゃべりたくない、と感じているかたもいらっしゃいます。

当店のホットペッパーでの事前アンケートにおいて、3割程度のお客様はなるべく静かに過ごしたい。と答えていますが、これは私は美容師に責任があると感じています。

美容室のお客様の中に「ファン客」と言われる層がいらっしゃいます。

美容師の仕事においてこの「ファン客」を掴むのが醍醐味といっても過言ではないくらい重要です。

お客様に「会いたい」「触れ合いたい」と思ってもらえるような美容師になるためにはどのようにするべきかをまとめてみました。

-至田 健三(しだ けんぞう)-
・美容師歴24年/美容室2店舗の経営者
・10年連続グループ売上No.1
・最高月間指名売上200万円以上
・100名以上の美容師の育成に携わる

 

美容室においてのファン客とは

ファン客とはその名の通りお客様が、美容師や美容室のファンであることを示します。

全面的に美容師を信頼してくださっているので、美容師側の提案を受け入れてくださることも多いです。

お客様を担当するにあたってカウンセリングはとても大切な要素です。

カウンセリングで求められている多くのものは【似合わせ】です。

「自分に似合うヘアスタイルが分からない」これが1番多いお悩みで、カウンセリングでのポイントはお客様が美容師を信じてくれるかです。

ファン客は美容師を信頼してくださるでしょう。つまり提案が通りやすいということです。

 

ちなみにファン客のなかには、自分の担当美容師が人気美容師だと嬉しいと感じてくださる方もいらっしゃいます。

掛け持ちの入客をし、フロアで忙しそうにしている人気美容師に担当してもらえるとか、店長に切ってもらえているなどのブランド価値を感じていただけることも多くなります。

ファン客のお客様は単価や店販購入率も高い

ファン客の方はいわゆる美容師の「信者」ですので、美容師側の提案を受け入れていただく確率が高くなります。

当店の地域(東京都葛飾区)において、私調べでのカットカラーの平均価格は約8,000円程度ですが、私のお客様のカットカラー料金の単価は11,000円です。

当グループにおいて店販購入比率は10%で優秀な数字ですが、私のお客様はファン客が多いので20%ほどとなっています。

◯◯様にはこのシャンプーが合いますよ、とか、このスタイリング剤がいいですね、パーマをかけるといいですよ、などの提案を受けていただけることが多くなります。

お客様は自分に合っているシャンプーなどネットで調べたりお友達に聞いたりする方も多いですが、美容師は施術しているので、より精度高く髪質に合う商品などの判断ができます。

たとえばもっと髪が綺麗になる提案が通れば、お客様の髪がさらに綺麗になる→お客様がお友達や家族に髪を褒められる→さらに信頼していただけるようになりプラスのサイクルが「ファン客」を作り、その結果、単価と店販の売上が高くなっていくのです。

合わせて読みたい:【すぐできる】美容師が店販売上をあげるコツ

ファン客を掴める美容師が得られること

ファン客のお客様は「信者」です。全面的に信頼してくださっているので、会話もスムーズです。

信頼関係がない方に「今日どこかに行くんですか?」と聞かれてもお客様からしたら「関係ないでしょ」と思うでしょう。

ファン客のお客様はそのような会話もスムーズで会話も深くなっていきます。

会話が深まれば、お客様のライフスタイルが見えてきて、提案の幅が広がります。

関係性が「美容師とお客様」を飛び越えすぎるのも良くないと思いますが、会話が人生相談に発展するなどお客様と密な時間を過ごすことになるでしょう。

 

深い話をすると楽しいし勉強にもなり、ファン客が多いほど毎日の仕事が充実してきます。

ファン客を多く掴んでいる美容師は、再来店率が90%以上の数字がほとんどで、多い人は95%以上の再来率をほこります。

美容師のスケジュールを見て予約してくれることも多いので、連休などが取りやすくなることもあります。

休みの取り方など自由が効きやすく、プライベートも充実しますし、売上も高いのでお店・会社からの評価も上がり、給料も上がりやすくなるでしょう。

美容室の失客理由の1位は「忘れられる」

ファン客になってもらうのに大切なのは、お客様が普段からお友達などに髪を褒められることです。

逆に、某雑誌アンケートで美容室の失客理由の1位は「忘れられる」でした。

印象に残らない美容師はお客様に忘れられてしまいますが、普段から髪を褒められることが多いお客様は担当した美容師の印象が強く残ります。

お客様からしたら技術はできて当たり前で、お客様が望んでいるスタイルを再現できないのは論外です。

技術においては基本(ベーシック)はとにかく大事。

例えばブローは根本をしっかり伸ばす「根起こし」という基本の技術が何よりも大切で、それができて初めて応用のアイロン技術などが活きてきます。

そこが理解・判断できないとお客様に適切な提案ができません。そうなればお客様はご自宅でもオーダーのヘアスタイルを再現できなくなってしまい、褒められる機会も減るでしょう。

ブローに限らず様々な技術において基本(ベーシック)ができて初めて応用が効いてきます。アシスタント時代に習うベーシックはしっかり身につけておきましょう。

スタイリストになってからもベーシックは学び直した方が良いでしょう。

お客様の髪の悩みはベーシックを理解していることによって解決できることが多いのです。

美容師としての前に人として

美容師である前に人として大事なことは、考え方をプラスにすることです。

プラスの考え方
常に前向きで、肯定的、建設的である。
みんなと一緒に仕事をしようと考える協調性を持っている。
真面目で、正直で、謙虚で、努力家である。
利他的でいつも他人を思いやる気持ちがあり、感謝の心を持っている。
善意に満ちていて、思いやりがあって優しい。
(参考文献 「考え方」著稲盛和夫)

この考え方は人間力を上げる基本で、たとえばお客様の前でスタッフを叱ったり、自分のことしか考えないような行動をするなど、1つでも反対の考え方があればお客様にも伝わってしまうでしょう。

美容師の仕事はお客様との関係性が密になればなるほどファン客になってくれる確率も上がります。逆に関係性が薄い場合はファン客にはなりません。

考え方がプラスになり人間力が向上し、お客様の求めるヘアスタイルの再現、自宅でのケアまでプロデュースできれば自然とファン客になる確率が上がるでしょう。

カウンセリング能力を高める

お客様を施術するにあたってカウンセリングは最重要事項と捉えるべきです。

美容師が技術ができるのは当たり前。お客様にとって1番大事なことは自分を理解してくれているかどうかです。

最初のカウンセリングで大丈夫そうだな、と思っていただくことが最重要でしょう。

AIによる技術進化において

2024年現在において、AIの顔認証技術はかなり精度が上がってきていると言えます。

あくまでも私の推測ですが、事前カウンセリングを済ませる技術が発達したとして、ご来店前にAIによるヘアスタイルの提案を事前に受けられるようになれば、それでいい、と感じるお客様も一定数現れるでしょう。

そうなった場合、美容師の提案を通すのにハードルが高くなることが想定されますが、カウンセリング能力を高めることがファン客をつかむのにより大切になってくるでしょう。

ファーストインプレッションの重要性

まずは美容師の第一印象。見た目がオシャレ、清潔感がある、など視覚の印象はとても大事です。

当サロンでは美容師のおしゃれをサポートする福利厚生で、月に1万円まで洋服やネイル代などをサポートしているのはそのためです。

男性スタイリストは初めての女性のお客様で最初から髪を触らない方が無難でしょう。なぜなら女性にとって髪は大事な身体の一部だからです。

合わせて読みたい:美容師オシャレサポートという福利厚生の導入背景

お客様の最初の発信を見逃さない

最初にお客様が発する言葉は特に重要で、お悩みがある方は大抵そのときにその場所を触ります。

たとえば毛先のダメージを気にしているロングの方は毛先を触りながら「毛先が傷んでしまって、、、」とおっしゃいます。

最初に言った言葉がお悩みであればそこは必ず解決する必要があると思ってください。

そして、最初にお客様が言った言葉のトーン、早さなどをしっかり聞いて、極力そのトーンやスピードに合わせた話し方をすると効果的です。

ファーストインプレッションでその後のカウンセリングのスムーズさに影響が出るので注意が必要です。

提案力を身につける

「提案して欲しい」人と「要望を聞いてほしい」人など様々なお客様がいらっしゃいます。

ファン客を作るには「提案して欲しい」人はチャンスと言えるでしょう。

お客様のご要望に対して提案の選択肢を数多く持っていることと、それをお客様に分かりやすく伝えることがとても大事です。

お客様目線の情報収集としては、SNS(インスタグラム、TikTok、Pinterest)や毎月のファッション誌などにも目を通しておくことが大事です。

プロ目線の情報収集としては、セミナーに行く、オンラインサロンに加入する、美容専門雑誌を1年定期購読するなどがおすすめです。

情報を広く収集することにより、お客様が言っていることを早く察知することができるようになります。

「最近のドラマに出てた女優の〇〇さんのような髪型ですか?」など、お客様に刺さるような言い回しができれば、この人はわかってくれるな、となりやすいでしょう。

問題を直接伝えない

お客様の髪質の不備を伝える言い方は要注意です。

くせ毛の方に「クセがありますね」、ダメージ毛の方に「傷んでますね」などは直接言わないようにしましょう。

何かしらのマイナス要因で、お客様の要望に答えるには素材的にむずかしいケースもあります。

マイナス要因をしっかり伝えずに仕上がりがうまくいかなかった場合は施術した美容師の責任です。

頭が大きい人は「ハチが張っていますね」などの言い回しをしたり、髪にダメージがある人は過去の施術は何をしたのかを詳しく聞いたり、くせ毛の人は「梅雨時期は大変ですか?」など、言葉に工夫して最初のカウンセリングにおいてしっかりと理解していただく方が良いでしょう。

最初からわかってくださっている方は必要以上に繰り返し言う必要はありません。(ベテランになるとそうではないケースもありますが)

理解してくださったらオンカウンセリング(施術中)において、デメリットの対処法などの提案ができると良いです。

最初のプレカウンセリング(最初の)ではあくまでデメリットを理解をしてもらえるところまでで良いでしょう。

イメージ共有ができればあとは仕上がりが良く、自宅での再現性、ホームケアの共有ができればお客様満足度は確実に上がります。

コミュニケーションを取るにあたり大切なポイントは↓の記事を参考にしてみてください。

合わせて読みたい:渡部建さんに学ぶ、美容師の営業でのコミュ力を上げるには

セルフプロデュースが大事

施術中の会話で最後に印象に残るのは自分の話を聞いてもらえるかどうかです。

最初から自分の話ばかりしてはお客様もいい気分はしません。まずはお客様の話に全力で耳を傾けましょう

信頼を得てから自分の話をどの程度出来そうかを探ります。

ブログやSNSの発信をお客様にみていただくことも1つの手です。

お客様にとって印象に残らなければ、次に髪を切りたくなった時に思い出してももらえません。

上手に自分をアピールできるようにしましょう。

カルテの最大限の活用

カルテの情報量と内容はとても大事です。

薬は何を使った、何分置いたなどの施術の情報だけではなく、お客様の好み(髪型、服装、メイク、香りetc)など様々な情報を記載しましょう。

当サロンでは紙のカルテより電子版を推奨しています。

電子カルテなら、当日のビフォーアフターも記録に残せます。

お客様も前回の仕上がりが自分の写真で残っているのは次のオーダーをしやすいとご好評です。

家族構成や仕事、プライベートのお話が聞ければそれらの情報を細かく記載した方がいいです。

記載する際はきちんと整理して、施術の記録と好みなどは区分けをし、いつでもその情報を引き出せるようにしておくと良いです。

注意しなければいけないのは、カルテの情報は正確でなければいけません。間違った情報を記載してしまうと逆効果になります。

おそらくお客様はこうなりたいと思っているだろう。といった不確定な予想なども、予想であることも添えて正確に、かつできるだけ詳しく記載しておきましょう。

来店回数によりカルテの活用法が決まる

カルテの活用方法は、来店回数でも違います。

2回目の来店の場合、細かく前回の内容を覚えてますよ、とアピールしすぎるとプライベートな内容をカルテに書いていることを察知されるケースがあります。

デリケートな部分でもあるので、そんな感じでしたよね?的な確認をして、覚えてくれてたんですね。と言った反応を引き出せればベストでしょう。

初回から2回目くらいの来店まではそのくらいの距離感が警戒されずベストな関係性です。

3回目に指名をいただければ、大丈夫そうなお客様は一気に距離を縮められるとお客様の安心感が違います。

お客様から距離を縮めてくる場合はそのような駆け引きは必要ありません。

カルテ情報をスタッフと共有しよう

細かなカルテの情報は他のスタッフとも共有できます。

美容師の仕事はチームワークがあると最大限の結果が出せます。

細かな情報をヘルプに入ってくれるスタッフがカルテの情報を基に、好みのポイント・注意事項などを把握できれば確実にお客様満足度は上がります。

営業に入ると情報共有が難しくなるので、開店前の朝礼などで全スタッフとカルテの共有をしておくと良いでしょう。

カルテの記載はなるべく早めに

営業後にまとめてカルテ記入をすると、細かい情報を忘れがちです。

なるべくすぐに記載するのがベストですが、忙しいとフロアを優先しなければいけません。

その場合はその都度メモを取るようにし、まとめてカルテに記載する際に忘れないようにしましょう。

私も過去に忙しくて営業終了時にまとめて書いていた時代もありましたが、あるお客様の情報を別のお客様のカルテに記載してしまい、次にご来店いただいた際にお子様がいらっしゃらないお客様に子供の話題をしてしまったりと大失態を犯してしまったこともあります。

カルテの記入はなるべく早く、正確に記載する必要がありますのでご注意ください。

カルテの精度を上げるために

カウンセリングの様子を細かく忘れないために動画を撮る、もしくはボイスレコーダーで記録を取るなどのアクションも有効です。

ただし、その情報をお客様の許可なくSNS等で発信するなどの行為はもちろんやめましょう。

あくまでもカルテの記録のための活用に留めておいてください。

まとめ

ファン客のお客様は、美容室にとって最も大切にしなければいけないお客様です。

ファン客を掴むには人として優れていることや、美容師として優れていることなど様々な要素が必要です。

それだけハードルが高いとも言えます。

掴めるようになるまで努力は必要ですが、一度コツを掴めれば増えていくのは早いです。

ファン客を掴むとさらにご友人などを紹介してくださいます。

私はスタイリストデビュー間もない時に、当時の先輩からファン客は25人のお客様を紹介してくれると教わりました。

逆にファン客1人を失うと、25人の紹介者を失う可能性があります。

それほど重要なお客様です。

普段からの言動に気をつけて、人間性を高める努力をしていきましょう。

 

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