美容師の社内コミュニケーション術

美容師の仕事はチームワークが必要不可欠で、スタッフ同士のコミュニケーションは欠かせません。

同時にサロン内の人間関係に悩む人も多いかと思います。

サロンによってさまざまな雰囲気、向かっていく方向性はそれぞれあると思いますが、人もそれぞれです。

人間関係の問題というのはちょっとしたことの積み重ねで大きくなっていきます。ある日急に悪くなる訳ではありません。

サロンワーク中において、普段から気をつけるべきちょっとしたことをご紹介していきます。

-至田 健三(しだ けんぞう)-
・美容師歴24年/美容室2店舗の経営者
・10年連続グループ売上No.1
・最高月間指名売上200万円以上
・100名以上の美容師の育成に携わる

 

スタッフの仲の良さとは

美容学校の就職ガイダンスに行くと必ず聞かれるのが「スタッフ同士仲が良いですか?」という質問です。

私は弊社のスタッフは人間関係は◯ですよ、と必ず答えます。

その理由はスタッフ同士、ホントによく会話(コミュニケーション)をしているからです。

と同時に友達ではないのでそういった仲の良さではないけどね、とも答えるようにもしています。

もちろん仲の良さとは心通えるかどうかですから、友達のような関係性も必要な部分はありますが、仕事上での同志なので友達のような関係性だけでは成立しない場面もあります。

・人がした仕事のミスを自分がカバーした時
・自分についた指名客が人に移った時
・人が取った予約が店長に報告がなく、自分が怒られてしまった時
・同い年だけど仕事の経歴に差があり、同い年の先輩に注意を受けたとき
etc

あげればキリがありませんが、こういった場面においてただ仲が良いだけではいけません。

どうしても仕事の上での関係性というのがあり、学生時代の友達とは違う場面が多くあります。

スタッフ同士の仲の良さとは「仕事」というもののうえに成り立っています。それを前提に仲良くならなくてはいけません。

公私混同をしない

仲の良さを履き違えるのはよくありません。

スタッフはあくまでも仕事の仲間ですから、何もいわなくても自分のこと分かってくれるよね?など相手に過度な期待を持ちすぎると、それに見合った返答がこないとストレスになります。

私はこれはプライベートでも同じだと思っています。

実際家族(妻)に対し、俺の気持ち分かってくれてるよね?という態度が少しでも出ると関係性はこじれます。(私もお恥ずかしながら、結婚当初は何度かそのような場面がありました)

家族や恋人でもそうです。まして仕事上の仲間に対して、度がすぎるとそのようなトラブルに発展してしまいます。

同じ年であってもキャリアが上なら先輩です。

ですが決してプライベートでスタッフ同士付き合うなといっているわけではありません。スタッフみんなでディズニーランドに遊びにいったり、飲みにいくなどの交流はとても良いことです。

そういう付き合いができれば当然チームワーク向上になります。

その際に、プライベートの付き合いがあったとしても、言葉使いには気をつけたり、仕事上の延長の付き合いというのは念頭におくべきでしょう。

美容師のコミュニケーションの注意点

美容師は職人の仕事です。やればやるほど上達していきます。そして自信と同時にプライドも出てくるものです。

その時にちょっと指摘されると言い訳をしがちです。そのちょっとした言い訳の積み重ねが人間関係を悪化させます。

ですが懸命に毎日美容師をやっていれば、当然自分が正しいという感情も出るものです。

そういったときに普段のコミュニケーションがあるのとないのでは、大きな差が出るものですが、普段のコミュニケーションの中でもやってはいけないこともあります。

・挨拶は目を見て笑顔ではっきりと
・休憩に入っている人へ「お疲れ様です」をいう
・自分が先に休憩に入っていたら「お先です」をいう
・愚痴をいわない
・自分の話ばかりしない
・お互いに相手の話を聞く姿勢を持つ
・思いやりを持つ
・押し付けがましくならない

これらは自分のルールとしてしっかり持っておくと良いでしょう。

感覚としては、常連の指名してくださってるお客様と会話するレベルです。

接客をする際に自分勝手な話ばかりはできません。「親しきなかに礼儀あり」ということを忘れてはいけません。

チームワークを大切にする美容室は「伝える」が命

サロンワークにおいて、チームワークが良いサロンというのはとても効率が良く、生産性が高い=給料や条件が良いサロンと定義しても過言ではありません。

コミュニケーションの観点でチームワークの良いサロンが必ず行っているのが「報連相(ほうれんそう)」です。

・お客様からいわれたご要望をカルテの特記事項に記載
・電話予約の確定情報を担当、及び管理職に伝える
・お客様から頂き物をした際に、即全スタッフと共有→みんなですぐにお礼を言いに行く
・材料の有無などの報告
・薬の塗り方など技術でわからないことがあった際に自分で勝手に判断しないで担当及び上司に相談する
etc

これらはほんの1部の事案です。


この報告連絡相談というのは正直面倒なことばかりです。

自分は分かっていることをみんなに「伝える」ことが意外と大変で、ついつい怠ってしまうものです。

この面倒をちゃんとやれるかやれないか、です。

ではこの面倒なことをやるにはどうすれば良いか?

それはただ一つ「思いやり」を持つことです。

仕事上で人に伝えるのは人のためにやる行為です。言い換えれば人に伝えない人は自分勝手な行為なんです。

では、何をどこまで伝えるべきか。さきほどの事例でもあげた通り報告事案というのは無数にあります。

ですので基本的には全てのことを共有するつもりでいることが良いでしょう。ことあるごとにあったことをスタッフ同士で会話すれば良いのです。

こういうことがあった、こういうことをいっていたなど、まずは事実を伝えることが大事です。

・お客様がカラーで染みるといってました
・お客様が寒いのが苦手といってました
・担当のAさんがあのお客様時間に厳しいかただからお急ぎでといってました
・スタッフの〇〇さんが体調悪そうです
etc(お客様情報はカルテの特記事項に記入し、終礼などで改めて報告すると良いです)

注意点としては愚痴にならないようにすることです。

事案報告をしていると、つい愚痴になってしまいがちです。愚痴はマイナス要素しか生み出しません。極力避けた方が良いでしょう。

アシスタント(ヘルプ)がスタイリストにすべきコミュニケーション

アシスタントの立場から見てスタイリストに伝える方法は、まずはスタイリストが今なんの情報が欲しいかを考えることです。

掛け持ちしているスタイリストであれば、スタイリストがカット中に他のお客様のカラーなどの放置中にトラブルなどが起きていないかが気になるところです。

・ご予約のお客様の把握
・ご来店のお客様の全てのカルテの把握
・スタイリストと一緒にカウンセリングをよく観察し、お客様の不安や要望を把握

これらを理解した上で、スタイリストに放置タイムや代理塗布をしたときの細かな報告が大切です。

アシスタントがスタイリストの気持ちを考える行為は自分にとっても勉強になります。

とはいえ自分が経験したことのないことを察するというのは難しい行為です。

わからないことはなんでも相談する

サロンワークにおいてミスしてしまったり、疑問に思うことは多々あります。

そこで大切なのが、わからないことをなんでも相談するということです。

・あの場面どうしたら良かったですか?
・カラーは適切に塗れていましたか?
・ブローのクセ伸ばしはできていましたか?
などなど、どちらかというと相談が多くなってきます。

そういった姿勢だったりが社内コミュニケーションの基本になっていき、積み重なっていくと先輩からの信頼になっていき、スタイリストもアシスタントに仕事を任せやすくなっていくのです。

後輩とのコミュニケーションの注意点

後輩とのコミュニケーションにおいて、ただ一つやってはいけないものがあります。

それは「怒ること」です。

怒ると叱るはまるで違います。

怒るは、感情をぶつけることです。感情をぶつけると相手には何も伝わりません。生産性でいえば¥0です。

怒ることで得するのは、怒った本人の気持ちがスッキリするだけです。

もし、どうしても感情が高ぶり、怒りたくなってしまったら6秒間黙りましょう。

この手法はアンガーマネージメントと言われる手法です。

「叱る」は、相手を正しい方向に導き、どうすれば良いかを気づかせる行為です。

つまり後輩とのコミュニケーションにおいて大切なのは、後輩に対する愛情です。

そして、後輩のことを良く理解することが大切で、決して先輩の価値観を押し付けてはいけません。

後輩によっても目指しているものが違う

人はそれぞれ目指しているところが違います。

同じコンセプトのお店に入社し、同じ環境でいてもです。

その違いにより、日々の行動が変わるものです。その違いを認めてあげなければいけません。

決して自分がそうだったから、という価値観で後輩の行動を正そうとしてはいけないのです。

もちろんお店の決まり事やマニュアルなどは理解してもらわなくてはいけません。

最低限必要なことは研修などを通じて覚えてもらう仕組みが必要です。

そういった基本となるところ以上の部分は、まずは後輩の気持ちを徹底的に聞いてあげましょう。

そのために普段からたわいもない雑談をしてあげることです。


後輩は先輩に常に気を使っています。後輩といるときは常に心をオープンにし、話しやすい雰囲気を作ってあげることです。

その上で後輩の思っていることを引き出してあげます。

そこで後輩が望んでいることと実際の行動に矛盾があれば、気づきを与えるようないいかたをします。

・こないだ知り合いの美容師と話してて、こんなこと言ってたよー
・読んだ本にこんなこと書いてあってさー、自分もそうしようと思ったよー

など、直接具体的に指摘するというよりは、他人の事例などを踏まえて言ってあげるとオススメです。

後輩がコミュニケーションを取りたくなる先輩とは

後輩が話をしたくなる先輩を目指すことは大切です。

・指名のお客様が多い
・技術、接客が上手い
・謙虚
・いつも応援してくれる
・いざというときに頼りになる
・勉強家

後輩は先輩のことをよく見ています。先輩が後輩を見るよりも、後輩が先輩を見ていることのほうが多いといえるでしょう。

人のうえに立つ、というのは努力が必要です。そして驕らない(おごらない)こと。

尊敬できる先輩や店長がいるお店は雰囲気もよく、売り上げも上がり、自分も成長できる良い環境といえるでしょう。

まとめ

お店にはコンセプトがあり、そのお店によって向かっていく方向が違います。

組織の方向性があるとはいえ、人はそれぞれ思想が違うものです。

それを踏まえた上で、社内のコミュニケーションをすることが大切です。

全てのスタッフが同じ目標をもち、同じ価値観をもち、同じところに向かっていくサロンは最強です。

それを実現するために若手スタッフができることは、普段から細かなコミュニケーションをとることが大切です。

まずはたわいもない会話から始めて、一つ一つの会話を大切にしてみてくださいね。

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