美容師のシーン別におこりやすいクレーム・トラブルの種類について

美容室にクレームやトラブルはつきもので、どんなにがんばっても出てしまうものでもあります。

クレームがチャンスというようにも言われていますが、実際いただいてしまうとショックはあるものです。

そんなクレームもなぜ起きたのか、どのように改善すべきか、これらを頭の中でしっかり整理して活かしていけば今後起きなくなるし怖くなくなります。

このの記事では美容室でおこりやすいクレームの種類や原因と、マインドセットをどのようにすれば良いかを解説します。

アシスタントの方やデビューしたてのスタイリストの方はクレームを理解でき、乗り越えなければいけないもの、とご理解いただけると思います。ぜひ参考にしてみてください。

-至田 健三(しだ けんぞう)-
・美容師歴24年/美容室2店舗の経営者
・10年連続グループ売上No.1
・最高月間指名売上200万円以上
・100名以上の美容師の育成に携わる

 

クレーム・トラブルのほとんどがカウンセリングミス

美容室のクレームの原因はほとんどがカウンセリングミスによるものです。

プレカウンセリングにて最終的な仕上がりの共有、お客様のお悩み、以前の施術履歴の正確な把握をしなければいけません。

プレカウンセリングの時点で最低限の共有ができてないと、仕上がりが悪ければクレームになるでしょう。

オンカウンセリングやアフターカウンセリングも重要です。施術中の技術の説明や仕上げ段階のスタイリングの説明も大切です。

ヘアースタイルの良し悪しを決めるのは美容師ではなくお客様です。決して美容師が勝手に良いと判断してはいけません。

お客様の望むヘアースタイル、お悩みの解消をベースにカウンセリングをしていかないとお客様と仕上がりの共有は絶対にできません。

カウンセリングでの仕上がりの共有は、お客様との信頼関係の度合いを指します。つまり、クレームになるのは信頼関係が薄いと言えるということです。

お客様とのコミュニケーションを大事にし、信頼関係を最大限にできるようにしていきましょう。

美容師のクレームの種類

弊社ではクレーム報告書を作成し、どのようなクレームがあったかを記録を取り、次に活かせるようにしています。

その報告書にて実際に多かった報告事例をいくつかご紹介します。

カット編

前髪が長いので切って欲しい

前髪をいい感じにしたいけど、すぐ目に入るのが嫌だから理想より少し短めにして欲しいというオーダーがよくあります。

目のきわくらいに切ると目がぱっちり見える効果があるので、フェミニン系スタイルに多いオーダーです。

これは美容師的に言うとオーダーの時点で矛盾していて、クレームになりがちです。

1番可愛い長さは目のギリギリ、それだと1週間で目に入る。

この矛盾点を最初のカウンセリングの時点でご説明できないとクレームになります。

いつベストな前髪の長さになりたいのかをしっかりお客様とお話しましょう。

重いので軽くしてほしい

重いので軽くしてほしいというオーダーで認識がズレやすいのは2つのケースがあります。

1つ目はワンレンボブなどの重めのスタイルオーダーで、見た目の重さと実際の毛量の重さのどちらをお客様が言ってるのかを判断できていないケースです。そこの判断を間違えるとクレームになります。

2つ目は毛量で重いのではなく、癖のうねりで膨らんでいることをお客様が重いと思ってしまっているケースです。

見た目の「重さ」は「フォルム」になりますので、レイヤーをどれくらい入れるのか、レングスをどのくらいにするのかで大体は決まります。

分かりづらいのが、どのくらいソギを入れるか(梳くのか)です。

これをお客様に確認し、美容師とお客様が共通の認識を持たなければいけません。

美容師が梳かなくてもいい髪質だと判断しても、お客様にとっては毛量が多いのが悩み、と判断している方も多いのです。

日本人は癖毛大国と呼ばれるほど様々な癖毛が存在します。注意して判断しましょう。

ショートヘアーのイメージしていたスタイルと違う

ショートスタイルは頭の形が大切で、絶壁ハチ張りさんが多い日本人は、ヘアースタイルでデメリットをカバーする技術が必要です。

ネットに出ているショートスタイルはとても素敵なものばかりですが、毛質や頭の形によってお客様にとってあっているスタイルとそうでないものが明確に分かれます。

また、スタイリング剤によっても仕上がりに差異が生まれます。

ショートスタイルを切る場合は、次に切らなければいけないタイミングやスタイリング剤の説明、頭の形の詳細な情報をお客様と共有しましょう。

全てできるわけではないことを分かっていただかなければいけない場合は、必ず事前のプレカウンセリングにて説明しましょう。

途中のオンカウンセリングやアフターカウンセリングでデメリットを伝えてしまうと、お客様にとっては美容師がいけないんじゃないの?となってしまいます。

ショートスタイルでのクレームは明確な技術不足も多いので、真摯に受け止め練習に励みましょう。

練習は、ウィッグ相手にするよりも、数多くのモデルさんをカットする方が絶対に上手くなります。

私は美容師歴20年以上の中で、述べ4万人以上を担当し、ショートヘアーのカットセミナーを数多く受講して、いいとこ取りをしたショートカットをお客様にご提案しています。

カッターとしてのセンスが問われるのもこのショートヘアーのスタイルです。

ショートヘアーが得意になればカットが抜群に楽しくなり、お客様からも絶大な支持を得られるので、がんばって上達しましょう。

フェイスラインが長い

前髪にも類似しますが、顔周りのカットはとても重要です。

お客様は小顔になりたがっています。

フェイスラインは小顔効果No.1の部位になります。フェイスラインが長すぎたり後れ毛のオーダーがある場合にその長さが決まらないとクレームになります。

参考:フェイスラインの見るべきポイント
・頬骨がどれくらい出ているか
・エラが張っているか
・面長か
・丸顔か

日本人のコンプレックスで多いのがこの4点で、そこを消す長さと量でフェイスラインのカットを決めていきます。

しっかりお客様に確認を取りながら1番良いフェイスラインをプロとして提案できるようセンスを磨きましょう。

パーマ、カラー、縮毛矯正編

パーマのかかりが弱い、強すぎる、縮毛矯正のかかりが弱い

パーマの強すぎや弱すぎはクレームとして1番多いでしょう。これにはいくつか原因がありますが、特に多いのが以下の3点です。

・お客様のスタイリング力などを考慮できず、美容師が適正なカールをイメージできていない
・求めるカールのロッドの大きさ、薬剤選定、巻き方、放置タイムを適切に判断できない
・癖の度合いに対し薬剤があっていない、アイロン操作が甘い

これらのクレームの原因はさまざまな要素がありますが、薬剤を最新の物にするだけで解消しやすいでしょう。

もしサロンに古い薬剤しかない場合は新しい薬剤の導入を強くおすすめします。薬剤を変えるだけで、クレーム減少やパーマのリピーターに繋がります。

オーナーさんや店長さんに相談してみてくださいね。

ポイントは薬剤選定だけではありません。薬の塗布量や付け方など技術は多岐に渡ります。

アシスタント時代にスタイリストのヘルプにて、この髪質なら薬はこれ、塗布量はどのくらいか、ロッドのミリ数、放置タイムなどそれら全てをみて覚えていきましょう。

参考:見るべきポイント
・髪質による薬剤選定
・放置タイム
・巻き方(アイロン操作の強さ)
・2剤処理の仕方
・それぞれの仕上がり

アシスタント時代にどれだけ見て、自分の中でデータ化するかでスタイリストになった時にパーマや縮毛矯正の判断力がかなり違います。

髪質は千差万別で、実際やってみないとなんとも言えません。これには経験が不可欠です。

アシスタント時代からスタイリストのお客様を自分が一緒に担当している気持ちで営業に望んでみてください。

それだけでもスタイリストになった時のクレームの数がかなり減るでしょう。

薬剤でのダメージが出すぎた

薬剤でのダメージのクレームは修正が効かない場合があります。縮毛矯正でのビビり毛、ブリーチ毛への無理な施術などです。

明らかにかけられない毛に対して無理な施術をしたりすれば当然そうなりますが、お客様がどうしてもやって欲しいというケースもあります。

ブリーチ毛へのパーマ施術や、縮毛矯正の施術は酸性薬剤の進化により物理的に可能になってはいますが、軽く大丈夫ですよと言って施術するのは極めて危険です。

薬剤をかなり研究し、よほど自信がある場合でも、お客様に危険がある事を理解していただく必要があります。

プレカウンセリングにて、ブリーチ毛への施術は危険があるということを100%同意を得てください。(髪が溶け落ちてしまっても保証できないなど)

明らかなブリーチ履歴がある毛や、逆に黒染め、縮毛矯正の履歴が分かる髪の状態であればわかりやすいのですが、中にはその履歴がわかりづらい髪の状態の方もいます。

ご新規様や2回目のお客様は過去の履歴を詳しく聞いてください。

ロングのお客様は過去3年ほどまでさかのぼって詳しく履歴を伺う必要があります。お客様の中には過去の履歴は半年くらいまでで、1~2年までさかのぼって言ってくださらない場合があります。

髪は1カ月1センチほどしか伸びませんから、1年前に黒染めしていれば、根本から15センチ弱までしか綺麗にならず、そこより先(黒染め等の履歴がある場所)がチリついてしまうなどの事故が起きる可能性があるので、リスクがあることを伝えてください。

もしリスクをご理解頂けてない場合、施術して事故がおきた場合は基本的には美容師の責任になってしまうので注意が必要です。

カラーが思ったより暗い

カラーの仕上がりは、明度と呼ばれる明るさと、彩度と呼ばれる色味でおおよそ決まります。

オーダーで多いのはどのくらい明るくするか。

クレームで多いのは希望の明るさにならなかった時で、自店にてカラー履歴がない(カラーが初回の)お客様に起こりやすいです。

カラーは髪質で染まり方が大きく変わります。例えば9レベルの同じ薬を使っても6レベルまでしか明るくならない方や、逆に12レベルまで明るくなる方もいらっしゃいます。

地毛の色、お客様の目の色などを見て、元々明るい方は染まりやすい、真っ黒な方は染まりづらいなどの判断ができますが、予想と違う結果になってしまう方もいらっしゃいます。

自店(または自分)でのカラーが初回のお客様は、プレカウンセリングにて染めてみないと確実なことは言えないということをご理解いただく必要があります。

その上でお客様の髪のコンディションを見て予測してお薬を調合します。それをオンカウンセリング(施術中)に状況を細かくご説明をすると良いでしょう。

しつこいと感じてしまう方もいらっしゃると思いますが、クレームにならないようにするにはそのような予防線は必要です。

仕上がったらアフターカウンセリングにて次回のカラーの時期、この結果をしっかり記録に残しておくことをお客様に説明してください。

アフターカウンセリングはクレームを防げることだけではなく、次回の再来のきっかけにもなります。お客様に安心していただけることが何よりも大切です。

白髪染めで生え際が染まってない

白髪染めはフェイスラインが命です。

バックの目立たない部分はそこまで気を使わなくても良いですが、フェイスライン(特にこめかみ、もみあげ)は1本の白髪も逃してはいけません。

また、白髪は薬を埋めるように塗る必要があります。フェイスラインの染まり残しは技術的なミスか、確認不足によるものなので細心の注意して施術しましょう。

ホームカラーの施術履歴の場合

ホームカラーの履歴は特に注意が必要です。

ホームカラーは不確定要素が多すぎて、正確な判断が出来ません。

理由としては薬の性質もそうですが、お客様自身の判断で染めるので、塗布量、放置タイム、塗る順番が読めないので、ムラになる可能性がかなり高いといえます。

美容室のカラー剤はプロが染めるので、薬の強さが優しいのです。それに比べてホームカラーはかなり強い薬剤といえます。強ければ当然ダメージも多く、染まりにムラが起こりやすいのです。

もちろん確実にムラになるわけではありませんが、プレカウンセリングにてホームカラーの履歴の有無をお客様に聞くようにしましょう。

いつどのような薬をどのくらいの塗布量でどのくらい放置したかなど正確な答えはできない方がほとんどですので、ホームカラーのリスクと不確定要素が多すぎることを説明してご理解頂いてください。

ご理解いただけない場合はお断りすることも検討してもよいでしょう。

技術不足は練習を

クレームにおいて技術不足によるものは、お客様のご希望をヘアースタイルに表現できなかった時です。

厳しいことを言うようですが、技術不足はお客様からしたら論外です。これは美容師としては言い訳できません。

技術力を上げるには、YouTubeやオンラインサロンで情報を見ることも大事ですが、練習あるのみです。とことん出来るまで手を動かし、ひたすら練習するしかありません。

自分に過信しないことの大切さ

前項にも記載しましたが、ヘアースタイルの良し悪しを決めるのはお客様です。

美容師は長くやっているとどうしても自分のセンスが正しいと思いがちです。正直、私にもそういうところはあります。

ヘアースタイルに正解はありません。ピカソの絵を良いと思う人もいれば、良さが分からない人がいるのと同じです。

正解の無い中で、良さを決めるのはお客様以外ありません。お客様が心から喜んでいただければそれが正解です。

クレームが来るということは、気に入ってない証拠です。

何度もこっちの方がかっこいいって言ってんのに、言わんこっちゃない、、、。などとある程度実力がついた美容師は思いがちですが、それはちゃんと導けなかった美容師の責任です。

お客様の中には例えばセンチ単位で具体的な長さを指定してくるお客様もいますが、私の経験上、お客様の希望通りに切るとかえって似合わなくなってしまうことがあります。

最終的にはどのようなヘアースタイルになりたいかを美容師が導いてあげること=コミュニケーションがとても大切なのです。

施術を開始した時点で責任は美容師にあります。

自分の技術を決して過信することなく、常に新しいことを学ぶ姿勢がとても大事になります。

クレームは全てのチャンス

クレームは全てが悪いわけではありません。

お客様がクレーム(切り直し)などに来るということは、まだお客様がこの店ならどうにかなる、と信じてくださってる証拠です。本当に嫌なら何も言わずに2度と来なくなります。

美容師にとって、やり直しに来てくださってるということは再度チャンスを頂けるということです。

どうしてクレームになったのか、どうすれば良かったのか、どのように直していくか。

原因と対策をしっかりして、万が一技術不足によるものだとすれば徹底的に練習すれば良いのです。

クレームに来てくださることに全力で感謝をし、絶対お客様に喜んでいただくんだと強い想いで望めば、お客様もわかってくださる方が多いでしょう。

万が一、誠心誠意対応してもご理解いただけない場合は仕方ありません。あまり深く考えすぎないことも大切です。

先輩等に相談してもわからない場合は考えすぎず、他のお客様のことを考える方が生産性が高いと言えるでしょう。

一生懸命に自分なりにお客様のために全力を尽くした上でのクレームは、決して悩み苦しむ必要はないのです。

クレームに「でも、、、」という気持ちが先行しがちですが、自分へのチャンスと捉え、乗り越えた時に更にレベルアップした美容師となれることは間違いありません。

お客様も言いづらいなか勇気を出して言ってくださっています。

自分のキャパシティを最大限広くすることにより美容師として対応出来るお客様の範囲が広がります。

クレームは全てポジティブに受け取れるようになりましょう。

まとめ

クレームはカウンセリングミスにより起こりがちです。お客様と美容師の仕上がりや注意点の認識のズレが主な原因でしょう。

ヘアースタイルは可愛さだったりカッコ良さを追及するのと同時に、お客様にとっては生活の中での利便性なども考慮しなくてはいけません。

美容師側の観点だけで考えてしまうとクレームに発展してしまうので、お客様の声にしっかり耳を傾け、この美容師さんなら安心と思っていただける技術や人間性が必要です。

カウンセリングを上手にこなすには、お客様とのコミュニケーションは不可欠です。

そのためには美容師の仕事を楽しみ、追及し、その先にお客様が喜んでくださっている姿をイメージを持つことが大切です。

昨今ではお客様が美容室で「話したくない」とご希望されてるお客様が増加傾向です。(当社でのホットペッパーご来店事前アンケートや、有名雑誌アンケートより)

これは私は美容師の責任だと感じています。

美容師の人間性が高く、魅力的な人が多ければお客様も美容師とお話したい、と希望してくださる方が増えるはずです。

そのためには美容師の考え方やマインドがとても重要になります。

以下の記事も是非参考にしてみてください↓

お客様とコミュニケーションが取れる人間性を構築し、信頼関係を深くできるようにしていきましょう。

✳︎今回の記事は、悪質なクレーマーという観点からは書いておりません。

あくまでもお客様が本当に困っているケースのクレーム対応という観点から記述させていただきました。

返金を求めることが目的のクレームはまた別の対応になりますので注意をしてください。

 

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