美容室の店長は「お店の顔」です。お店の良し悪しは店長次第といっても過言ではありません。
私は2007年のPOLISH金町店の立ち上げの店長を任され、その3年後にFCオーナー就任、その後しばらく1店舗のオーナーをしていたので、実質店長の役割をしていました。
その間にさまざまな出来事がおきましたが、店長としての判断、立ち振る舞い、スタッフマネージメントなど、自分次第で売り上げが上がったり下がったりすることを経験してきました。
ともに働くスタッフの将来にも関わるほど大きな責任のある立場の店長が、どのような心構えで仕事に向き合えば良いかを私なりに経験を交えて記事にさせていただきました。
atention:この記事は現在店長をやっていない人も、長い美容師人生の中でキャリアアップをお考えの人にはぜひ参考にしていただければ幸いです。
・美容師歴24年/美容室2店舗の経営者
・10年連続グループ売上No.1
・最高月間指名売上200万円以上
・100名以上の美容師の育成に携わる
プレイヤーとマネージメントの両立
美容室の店長において、プレイヤーとマネージメントの両立は必要だと私は考えます。美容師は数字に現れやすい仕事であり、同時に職人であり芸術的側面をもちあわせます。
スタッフたちが店長の仕事をみた時に、うまいなあ、かっこいいなあ、早いなあ、など憧れをもってもらうというのはとても重要な要素です。
美容師の技術には正解がありません。
みんなすべからず自分の作るデザインを良いと思って日々仕事に励んでいるかと思います。
唯一正解があるとすれば、お客様が喜んでくれたときです。つまり売上の高い美容師はお客様の感動が多いという証拠になります。
ここまではプレイヤーであるための「正解」を述べましたが、店長となるとさらにスタッフから一目おかれる存在にならなくてはいけません。
「センスが良い」というのは非常に抽象的で、それこそ正解のないものですが、美容師が人の仕事をみたときに「うまい」と感じることはあります。
美容師は職人気質がとてもつよいので、店長の仕事ってうまいと思わないんだよね、とスタッフに思われては統率を取れなくなってしまいます。
ストレートにいってしまえば、下手な人にあれこれ言われたくないんだよね、ということです。
マネージャーとしての役割
スタッフからしたら、まずは美容師として自分より優れていてほしい。
その上で自分をしっかりみて理解してほしい。これがスタッフの本音と捉えるべきです。
・常に自分を正しい方向へ導いてくれる
・分からない技術などを相談する
・いざというときに頼りになる
つまり、美容師の店長はトッププレイヤーでありながら、スタッフが安心して働けるために常にバランスを整える必要があるということです。
良い意味でも悪い意味でもスタッフの本音を常に引き出し、それを経営幹部やオーナーと相談し、お店をより良くしていくというとても重要な役割なのです。
決して自分の売上至上主義になってはいけないのです。
店長が把握すべき7つの数字
店長が把握すべき数字はさまざまなものがありますが、大きくわけて重要な数字は
- 再来率
- 月の店舗売上
- 損益分岐点
- 客数
- 単価
- 指名売上
- セット面一席とスタッフ1人の稼働率
お店の改善などをするときに、これらの数字をもとにミーティングしたりします。
なんとなく抽象的に良い悪いを店長が言ってしまうとスタッフに伝わりづらくなってしまいます。
店長がお店やスタッフの評価を出すときに客観的な視点を持つことが大事なのですが、数字をもとに話ができると客観的かつ謙虚に受け入れてもらうことができます。
それぞれの数字を解説していきます。
①再来率
お客様が再来店していただいた確率です。
当店では再来率の期間を6ヶ月と定めていて、6ヶ月以内に再来していないのであれば、それは失客です。
再来率はとても大切な数字で、この数字が上がらなければ売上が上がることは難しくなります。
100人担当したスタッフが再来率80%だとしたら20人を毎月失客することになります。
そうなれば前年よりも売上をあげるには新規集客を20人以上獲得しなければいけません。100人担当したスタッフが再来率95%であれば、失客が5人ですので、新規集客が10人獲得できれば前年を超えてきます。
このように、再来率によって集客のアクションが変わってきますので、当然集客が多数必要であれば広告費用が高くなったり、様々なところに経費の加算が生じるのです。
お店の目標値をどこにもっていくかにもよりますが、前年と同じ売上をキープする目標はなかなか出さないのではないでしょうか?
現状維持は衰退を表します。各スタッフとお店のそれぞれの再来率をだし、原因と対策を練るのです。
失客したお客様がなぜそうなったかなどを見ていきます。
ヒアリングしたり、担当しているところをみて刈り上げの技術がないのか、接客がメンズのかたにウケていないか?
などを分析するのです。
②月の店舗の売り上げ
あたりまえですが、お店の月の売上は把握しましょう。
把握した上で、前年対比などをみるとよりよいでしょう。
美容室は年間を通して3月、7月、12月が売上が高く、1月、2月、8月、9月、10月、11月が閑散期となります。
③損益分岐点
損益分岐点とは、そのお店がいくら売り上げたら利益がでるかの数字です。
売上目標と似ている部分はありますが、損益分岐点にたっしていない場合は赤字であるということを把握したほうがよいでしょう。
スタッフの増減によってもかわる数字なので、直近の3年以内程度の離職率とあわせて把握したい数字です。
必要経費など全て把握している場合はよいですが、わからない場合はオーナーに損益分岐点を聞いてみるとよいです。
④客数×⑤単価
売上=客数×単価です。
どちらをあげるのかは戦略にもよりますが、この2つを正確に把握しましょう。
客数は再来率にも通ずるところです。
⑥指名売上
指名売上は、客数を取れてきたあとの単価をあげていく戦略のときにとても大事になります。
また、スタッフ評価において、指名売上というのは評価に落としやすい数字といえるでしょう。
価格帯によっては指名制度のない美容室もあると思いますが、そういった場合は例外です。
⑦セット面一席とスタッフ1人の生産性
生産性とはセット面とスタッフ1人の稼働率です。
・スタッフ数5名
・月の売上が300万
この美容室の場合、セット面の生産性は50万円、スタッフ稼働率は高く60万円ということになります。
(ちなみにこのような美容室は悪くはない数字ですが、私の知っている美容室で、スタッフ稼働率100万円というモンスターサロンも存在します。)
また、スタッフ稼働率に比べ、セット面の稼働率が少し低いですよね。
これはつまりもう少し稼働率を上げられるということですので、そのためにスタッフの仕事のスピードをあげるのか、スタッフを新しく募集するのか。
そういったことも対策として見えてくるのです。
常日頃から意識したいこと
賛否両論ありますが、店長のスタッフ教育は、月に1度のミーティングなどでしっかり言う、というよりは常日頃から意識するべきかと思います。
店長はオーナーと違い、スタッフとの距離が良くも悪くも近くなります。
あらゆる情報の中からお店にとって1番よい結果になる選択をオーナーと共有し、実行していかなければいけません。
ぐちや相談事など様々なコミュニケーションの中からスタッフにアドバイスができるとよいのです。
ミーティング形式で伝えることだけを意識してしまうと、スタッフが求めていない話になってしまった場合、聞いてもらえません。
スタッフから見られている
常にスタッフは店長のことを見ていると思ったほうがよいでしょう。
私は店長時代、店舗の最寄りの駅についたところからスイッチを入れるようにしていました。(どこで誰に見られているか分からないので)
ふとした時に見られている意識を持つことにより、言動発言にもより注意することができます。
・あくびを見える位置でしない
・スタッフが求めていることを常にキャッチする
・掃除など率先してやる
・挨拶を元気よく、言葉遣いを丁寧に
・スタッフのヘルプを率先して入る
etc
まだまだありますが、当たり前のことを自然にできるようにこころがけることが大切です。
トイレ掃除を率先してやろう
特にみんなが嫌がるところの掃除を率先してできるとよいと思います。
美容室に限らずトイレが汚いお店はえてして売り上げの低いところが多いです。
髪をキレイにしにきているのにトイレが汚いお店でキレイになると思わないですよね?
ですがやっぱりスタッフは汚いところの掃除は嫌がるものです。
そこを率先して店長がキレイにしていると、スタッフも自然にできてくるものです。
まとめ
店長という職は総合的なものを求められるので、とても大変です。解説させていただいた内容はあくまでもベーシックな部分です。
そこからそれぞれの店長の色を出していき、自分なりのお店にしていき、売上を最大化できればとても良い店長になれるでしょう。
ただ、勘違いしてはいけないのは、お店のマネージメントができても、実際の経営とは全くスキルが違います。
店長としてある程度の結果を残したりすると独立をしたくなるのが美容師というもの。
自分の想いの詰まったサロンを開業したい、とか強い想いがあればよいのですが、儲かりそうだからとか安易な理由で独立しようとすると失敗してしまいます。
まして勤めてるサロンのお客様を連れて行ったり、スタッフを引き抜いたりするのはモラルとしてありえない行為だと私は思います。
昨今では、美容師の賃金も上昇傾向で、店長の賃金も高くなっています。
特に店長は出来高制が多いと思うので、売上を高くできればある程度の給料が見込めます。
正直、自力で独立するよりよほどよい生活ができるでしょう。世の中においしい話など一つもありません。
自分に過信せず、日々精進してよい美容師ライフができるようやっていきたいものですね。