美容師という仕事のなかで、とても良い部分といえば、友達が髪を切りに来てくれるというところです。
その際に安くしてあげたい、という真理になるのが一般的かな、と思います。
全て無料でやってあげるのがいい、といったような思いにもなりがちですが、それはちょっとやりすぎです。
学生時代からの仲の良い友人がお客様として来店してくれた際に、どれほどサービスや割引をすれば良いか。
私は友人への割引はありだと思っています。
ただし、気をつけなければいけない部分はあります。
それについて詳しく解説していきます。
・美容師歴24年/美容室2店舗の経営者
・10年連続グループ売上No.1
・最高月間指名売上200万円以上
・100名以上の美容師の育成に携わる
前提:家族と友人の違いと友人の定義
家族は社員の福利厚生という観点から、営業での施術は割引きしていますので、以下は友人に対しての考え方です。
私が考える友人とは、サロンに来る前からプライベートの付き合いがあってその延長で「お店に行くよ」という話があった場合です。
たまたまサロンに来たのが友人で、来店理由が「友達だから」に該当しない人はここでは友達の定義とはしません。
美容師は友達がお店に来る
私が美容師になりたての2000年初頭、当時はSNSといったサービスがありませんでした。
仲の良い友人たちには私が美容師になると伝えてはいましたが、スタイリストとしてデビューした時にお店に来てくれた友人は数名でした。
そして、SNSが発達してから美容師としての発信をしたところ、数多くの学生時代の友人が来てくれました。これは本当に嬉しいことです。
モデルをやってくれていた友人が
アシスタント時代にモデルをやってくれていた友人が、私がスタイリストデビューをしたことをとても喜んでくれていました。
その友人はたくさんのモデルさんを紹介してくれたりと、デビュー前は本当に協力してくれて、ありがたい存在でした。
デビュー後も切ってくれと頼まれていたのですが、いつも友人の家でモデル練習をしていたので、しばらくそのようにしていました。月に一度の火曜日のお休みの日です。
次第にその友人から別の友達も切ってほしいなどの依頼があり、気がつけば毎週火曜日に友人の家に行き、カットなりカラーをしていました。
友人からのお礼はお昼ご飯をご馳走してもらうことでしたが、当時の私の休みは月に6日か7日でしたので、大半は友人のカットで消えていました。
さすがにキツイなと思い、友人にはお店に来てもらうよう交渉し、プライベートではできないことを伝えたところ、その後その友人から連絡がくることはありませんでした。
美容師は国家資格を有するプロである
私たち美容師は国家試験に合格した師業です。
これは私の考えですが、たとえ友人であろうと施術をするのであれば報酬はもらうべきです。
美容師も国家資格を有するまでに、またスタイリストになるまでには相応の努力が必要です。そして、お金と時間をかけています。
プロフェッショナルと呼ばれるかたは、決して自分の価値を下げてはいけないのです。
友達がお店に来た時にどこまでサービスをするか?
弊社の実例をご紹介します。
友人がお店に営業で来た場合↓
・定価より20%引き(カット、カラー、パーマ、縮毛矯正)
・炭酸スパ、前処理、カラー剤ランクアップなどのプチプラメニューを2メニューまでサービス
・他のサービス券との併用は不可
このようなサービスと決められています。
そして、過度な時間設定も認めていません。カットとカラーの場合、通常は2時間以内の時間設定がありますが、友達だからといって3時間枠にするなど特例は認めていません。
サロンによっても見解は異なると思いますが、弊社では、通常サービスより少しお得な設定にしています。
友人も売上の1部ということに抵抗がある方もいると思いますが、そこはプロとしての自覚を持つようにしましょう。
本当の友達は応援してくれる友達
友達のほうから過度なサービスを要求してくる場合は少し考えたほうが良いでしょう。
本当の友達なら、「応援したいから通うよ」「割引とかいらないよ」これらが適切かな、と思います。
でもせっかく来てくれたから、少しはサービスさせてね、といった関係性がベストかと思います。
ただし、美容師もプロフェッショナルとして友人を営業に招きます。
自分の大事なお客様と同じくらい大切に施術し、友達でも満足してもらえるような仕事をしなくてはいけません。
カウンセリングも決して雑にはしないで、自分のロイヤルカスタマーと同じくらいの気持ちで施術することが大切です。
友達にも満足してもらえるような技術とサロンの雰囲気を提供できるように全力で応えてあげましょう。
店販サービスはNG
店販は元々利益率の少ないものでさらなる値下げはNGだという理由もありますが、昨今美容室の専売品などは横流しが原則禁止されています。
メーカーさんも私たち美容師を信頼して下さって、美容師さんが説明してお客様に合わせてセレクトする商品など、美容室のための企画なども立ててくださっています。
その上で、友人に仕入れ値などで販売してしまい、万が一その品を自分のフリマアプリなどで販売してしまうと、追跡番号などで販売元が分かってしまい、お店自体がメーカーと取引停止になる恐れがあるのです。
サロンはメーカーさんやディーラーさんとは信用で繋がっていますので、スタッフの軽率な判断が時としてお店に迷惑がかかってしまう可能性もありますので注意をし、ルールをしっかり理解するようにしましょう。
まとめ
私が美容師になった理由の一つに、友人との付き合いが仕事を通じて継続できる、といった理由もありました。
たとえ友人でもプロとして施術する場合、また切って欲しいと思ってもらえるような技術や接客が必要です。営業で来店してもらうには、相当な覚悟が必要です。
お客様はもちろんですが、友人の髪もほんとに大切にしなくてはいけません。
理想は、友人がうまいからという理由でその友人を紹介してくれるようになることです。
つまり、友人であろうがお客様と変わらない気持ちで施術したほうが良いということです。
美容師としてどんなかたでも喜んでもらえるようになりたいものですね。